便秘は慢性病の一種ですが、即命にかかわることはほとんどの場合ありません。だからでしょうか便秘であってもそれほど深刻に考えていない人も多いようです。
しかし、便秘は様々な病気の誘因となり、中には命にかかわる深刻な病気もあります。
便秘を引き起こす病気には、大腸癌・大腸ポリープ、大腸憩室、腸狭窄、腸管癒着、腸閉塞、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの婦人病、痔などがあります。
さらに、長期にわたる便秘によって体内毒素が蓄積され、その毒素がアトピーや花粉症といったアレルギー疾患や成人病、肌荒れ等を引き起こすことさえあるのです。
アレルギーや肌荒れは、一見便秘とは何の関係もないように思われますが、実は大有りです。
人体は、いらなくなった老廃物を便や尿として排泄していますが、実はこの老廃物を排泄する機能は身体のいたるところにあります。
皮膚も排泄器官のひとつで、血液中の老廃物を、汗や皮脂として体外へ放出しているのです。
便秘になると、老廃物が体内にどんどん蓄積されていきます。その結果、発生した毒素が腸から吸収され、血液中に増えると、それを処理する皮膚にも負担がかかってしまいます。そのため、肌荒れやアトピー性皮膚炎という症状が出るのです。
また粘膜も大切な排泄器官です。
溜まった毒素を目や鼻の粘膜から排泄しようとすると花粉症、喉や気管支の粘膜だと喘息の症状となって現れるのです。
そして、それらのどの排泄器官も機能せず、すべての毒素が体内に蓄積されていった最悪の結果としてがんの症状となって現れます。
特に大腸がんと便秘は深い関連性があると指摘する専門家もいます。
大腸内に便が留まる時間が長くなればなるほど、それだけ大腸の壁と便中の発がん性物質と接触する機会が増えるで、大腸がんになりやすくなるのではないかと言われています。
たかが便秘と言っても決して侮ってはいけません。便秘による体内毒素の蓄積は万病の元とも言えるのです。
かつて日本人に最も多いがんといえば胃癌で、大腸癌はあまり見られませんでしたが、近年では大腸癌が急激に増えています。
この大腸癌の急増は、日本人の食生活の変化によって便秘が増えたことに起因するのかもしれません。
欧米化した食生活を続けていると、便をやわらかくして腸の通過をスムーズにする食物繊維が不足しがちです。
肉食に偏った食事をしていると、たんぱく質やカロリーは十分に摂れても、ビタミンやミネラルは不足してしまいます。
特に若い人ほど、高脂質・高タンパク質の多い食事を好む傾向にあり、栄養バランスが偏って便秘になりやすくなってしまいます。タンパク質は腸内の悪玉菌の大好物です。
ちなみに過去50年間で、日本の肉類の消費量は約10倍となっています。ファストフードやインスタント食品、スナック菓子などの摂取も爆発的に増加しました。
このような食生活が便秘の原因となり、便秘が大腸がんなどのより深刻な病気の誘因となってしまうのです。
便秘薬を長期間常用している人は、その副作用の心配もあります。特に酸化マグネシウムの長期投与は、血中のマグネシウム濃度が異常に高くなる高マグネシウム血症を起こすことがあます。高マグネシウム血症により呼吸抑制、意識障害、不整脈、心停止に至ることもあります。
特に、腎障害のある方ではマグネシウムを尿から十分に排泄できないので注意する必要があります。
また、高齢になると、高マグネシウム血症の初期症状である悪心・嘔吐、口渇、血圧低下、徐脈、皮膚潮紅、筋力低下、傾眠などの症状を自分で気がつかないこともあり、気が付いた時には重篤な状態になってしまっていることもあります。
便秘がある程度の期間続くような場合は一度医療機関での受診をして原因を確かめることが大切です。